[美術の窓]
■第73回白日会展(3月26日〜4月4日)

 
ひととき [大判画像] 1室
  1997年 白日会展 
S美術奨励賞

記事の抜粋
「ひととき」。S美術奨励賞。先だって三越で個展があった。それは小品であったけれども、興味深く見た。今回は細長い100号サイズの作品である。椅子にワンピースの女性が座っている。太目のカチューシャを思わせるような、あるいは太目のリボンを思わせるようなものを髪につけていて、正面向きの若い女性像であるが、顔は向かって左を向いている。昨年の作品より一段と力量が進んだようで、しっかりと落ち着いて描きこんでいる。また、女性の肌の色とバックの色とは同系色であって、その二つの調子が微妙に響き合っているのも、今回の作品の特徴のように思われる。とくに壁と床という差別をつけずに、調子でもってバックをつくりながら、ナイフをうまく使いこなして、手触りのある調子の表現にしている。それに対して人間の体のほうは筆でもってしっかりと丹念に描きこんで、肉体のもつ感覚を表現しているところが今回の面白いところだろう。また、首を右に傾けるという微妙な動き、あるいは下方の組んでいる足の表情などを見てもわかるけれども、肉体の微妙な表情がしっかりと捉えられている。