[美術の窓]
■第75回白日会展(3月26日〜4月4日)

 湫  [大判画像]
  1999年 第75回白日会展 1室

記事の抜粋
「湫」。ハーフトーンが面白い。水辺を画面の真ん中に置いて、その水と同色の空と、その間に挟まれる煙るような建物と樹木。それらのハーフトーンをバックにして白いブラウスに白いショールをはおった若い女性を立たせている。スカートは赤や青の模様のカラフルなスカートであるが、それに対照するようにスカートの背景には岸辺の緑を配している。そうした色彩のお互いの組み合わせが心にくく、よく行き届いているところがこの作品の強みと思われる。焦点は、このショールに手を添えた若い女性の顔の表情と手の表情である。とくに顔の表情にポイントがあるようで、首から顔にかける部分はしっかりと描き込まれている。どちらかというと、この画家は顔に興味をもちすぎて、ボディが弱くなる傾向にあると思ってきたが、今回は、背後のシチュエーションを作りながら、それによってこの女性の体全体のフォルムとボリューム感といったものがしっかりと安定していて、そこに載せられた右を向いた半ば横顔の女性に、ある力強い親密感と同時に精神的な陰影を与えることに成功したように思われる。これまでの同じモデルのシリーズの中でいちばん佳作と思われた。