[美術の窓]
■第78回白日会展(3月26日〜4月4日)
黄色いワンピース [大判画像]
2002年 第78回白日会展 1室
記事の抜粋 |
「黄色いワンピース」。ボリューム感を強調するのでもなく、装飾性を狙うわけでもなければ、寓意性を持たせるのでもない。木原さんのオーソドックスな造形性や美意識というのは意外と珍しく、貴重である。なにか、しみじみとした情感が伝わってきて、眺めているとホッとする。 椅子に座る若い女性の全身像を、画面の中にすっぽりと入れて描いている。顔はやや斜め横を向いていて、目線を下方にそらし、あまり表情のない顔つきをしているが決して無愛想ではない。膝の上で手を軽く組み、足もさりげなく交差させている。清楚で可憐な肖像である。灰白色に近い調子の背景の内側からは赤やピンク、緑、青などの鮮やかな色彩が滲み出て、全体でロマンティックな空間を作っている。その空間が、ふんわりと女性を優しく包み込んでいる。何とも言えぬ、不思議な存在感がある。じっと眺めていると、そのうちこちらを振り向きそうな気配がある。情感に満ちた存在感が魅力である。黄色いワンピースの花柄模様も細密に描かれているが、この若くて柔らかそうな女性の肉体を荘厳するような趣で、しっくりと馴染んでいる。 |