[美術の窓]
■第34回日展(11月2日〜11月24日)
或る日 P100 [大判画像]
<洋画> 2室
2002年 第34回日展
記事の抜粋 |
「或る日」。椅子に座り足を組んで、すこしうつむきかげんの女性像である。筆者は同じモデルを白日展と日展でずいぶん見て短評を書いてきたために、よく知った隣人のような気持ちになるから不思議である。今回は、目線あるいは顔の表情も魅力的だが、両手の表情がよいと思う。軽く閉じたような両手であるが、その角度が違って、その手が意外となまなましく大きい。女性のこの優しいエレガントな顔に比較すると、手が労働者のもののような力強さがある。人間の肉体というものは、接近して見ていくと、実に不思議なものであることがわかる。画家はこれまではムードのほうに 偏っていた。今回もムードは甘やかであるが、そのディテールに食い込むように筆が入って いくところが面白く感じられるのだ。足もそうである。リアリズムというものがより一歩 前進したということになるだろうか。しかし画面全体のすこし霧がかかったような独特の 甘やかな調子も、手前のくっきりとした人体と不思議な調和をしていて、ともすれば分離しそうな ところが、うまくまとめられているところもこの画家の筆力と思われる。 |