[美術の窓]
第35回日展(11月2日〜11月24日)

 惟る P100 [大判画像] 
<洋画> 2室
2003年 第35回日展

記事の抜粋 
「惟る」。曲線状の背もたれのついた椅子に、斜め横を向いて腰掛ける女性像である。左手が肘掛けに添えた右手の上にそっと置かれ、足を組んでいる。木原の描く人物像は、いつも甘美でロマンティクな背景に抱えられるようにして存在する。しかし今回はいつもより、その甘やかな気配が後退し、そのぶん人物に迫る力が強まったように思う。手の表情や素足、あるいは目線といったディテールが、これまでより一層リアルな表情を醸し出して、力強くなった。襞の寄った洋服の流麗なフォルム、制御はきいているが華やぎのあるワンピースの色彩。可憐で、どことなくノスタルジックな味わいのある佇まいが、親密な感情を喚起する。しばらく見ていると、このモデルは座る向きを変え、こちらに語りかけてくるような息づかいがある。存在の、不思議なリアリズムである。