[美術の窓]
■第81回白日会展(3月26日〜4月4日)
或る日 P100
[大判画像]
2005年 第81回白日会展 1室
記事の抜粋 |
「或る日」。若い女性が床にしゃがんだ格好を描いている。その姿はリラックスしているが、同時にどっしりとした重量感がある。重量と言うよりも、むしろ質量と言った方が正しいかも知れない。女性の体温だとか、肌の温もりが宿っていて、血の通った肉体の感触が伝わってくる。そういった肉体的な存在感に加えて、この女性の過ごす時間のイメージまで感じられる。ディテールの表情が豊かである。膝の上にそっと置かれた指の表情なども、じつにしなやかで柔らかくて、デリケートである。その末端にまで血が通い、体温が宿っていて、生命(いのち)の息づかいを感じる。今回とくに目を引いたのは、丹念に描き込まれたブラウスの表現である。真珠色が輝くなかに、わずかにグリーンや紫、朱色などが覗き、ロマンティックで甘美なニュアンスを添えている。このあたりのマチエールに、画家のイメージが織り込まれているような温かな感触と厚味がある。膝上に置かれたストールの花柄もしっとりとして、野に咲く花のような可憐さがある。背景のグレーの調子もシックで、女性の上品な雰囲気とフィットしている。女性の存在を通して、花や草木、あるいは風の感触や季節の芳しい香りが感じられる点が面白い。 |